地域:東京都
仕事人間
彼女は、仕事が恋人のように、毎日毎日仕事をすることに喜びを感じ、この仕事が大好きでした。
部下にも信頼され、順調な毎日を送っていました。
しかし、プライベートでは、大学時代の同期が次々と結婚、出産。後輩にも先を越され、プライベートでも仕事のことばかり考えているあまり、それが原因で彼氏ができないことも、ちゃんと気づいてはいました。
だけど、全てを仕事に費やしたい彼女は、彼氏とデートしたり、ベッドに横になって映画を見たりする時間があったら、仕事のアイディアを何か考えたいと思うほどの仕事人間でした。
周りの友達も心配し、ご飯会を開いて紹介させたり、出会いをたくさん作ろうと行動してきました。
バー
ある日、仕事終わりに久しぶりに友人とバーへ飲みに行きました。
彼女はお酒が好きで、酔うと本当にバリバリ仕事してる人かと思うほど、女の子らしく可愛らしい性格に変わります。
友人は、そのバーで近くに座った一人のスーツを着た男性と彼女をくっつけようと行動しました。
そして、2人は隣に座り仕事のこと、出身、好きな映画、音楽など、お互いのことを軽快に話し始めました。
お酒も周り、彼女は随分酔ってしまいました。
そろそろ帰ろうかとなり、彼女は少しふらつきながら彼の腰に手を回し、タクシーに乗り込みました。
心配だと彼も一緒に乗り込み自宅に送りました。
自宅に着いた彼女は、水を一口飲み、目の前にさっき出会った彼がいることに顔を赤くして少し驚き、その驚きを隠す間もなく、彼が唇にそっとキスをしました。
サクラカラー
友人によってバーで出会った彼とは、あの日自宅に送ってもらい、キスをされてから、毎日のように連絡を取り合うようになりました。
彼氏が欲しくて、彼がよくて狙ったわけでない彼と、こんなに毎日毎日連絡を取ってるなんて、仕事中にも、通勤中にも、お昼にも、寝る前にも、いつも。
おかしい、仕事が大好きで仕事中にプライベートを持ち込むことはこれまで彼氏がいたときも、好きな人ができたときも絶対になかった。
仕事中は、シャットアウトしていた。なのに、彼が彼女の中に入っていくのでした。
彼女は、自分は彼のことが好きなんだ、まだバーで会ったあの日しか会ったことがないし、あの短時間で色々語り合った気がするけど、体の関係もない彼のことが、好きなのだと感じました。
彼に、どうしてあの日キスをしたのか聞いてみると、彼は「桜色のあなたの唇が美しかった。奪いたいと思った」と言いました。
バーに行くときに必ずつけるサクラカラーの紅。
初めて彼が美しいと言ってくれたのです。
そして、その言葉があって彼女は彼と付き合うことになりました
変えなくたっていい
ずっと仕事人間であることが原因で彼氏がご無沙汰だと思っていたが、そうじゃないみたいだとわかったのです。
そう彼が教えてくれたと言います。
彼は、出会ったときから、ちゃんとした初めてのデートに出かける日まで、彼女が仕事人間であることは知りませんでした。
そういうとこが好きだと思ったのでないと言ってくれた人は、この仕事をはじめてから彼が初めてでした。
彼女にとって、彼氏ができたことは、プライベートも充実したということではありません。
今まで以上に仕事はバリバリやっているし、休日は部屋にこもって映画を見たり、休みなのに仕事のことばっかり考えています。
でも、彼という存在が、彼女の心に愛を宿しました。
なので、一人でいても、一緒にいても、仕事していても、徹夜でも、愛が彼女を包み込んでいるのです。
彼氏ができないから仕事を抑えたり、変えたりしなくていいのです。
自分を変えようとしなくたっていいのです。
きっと、彼女を見ているとわかります。
運命は会うべきときにやってくるのです。